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降旗さんとは土地探しからのお付き合いとなった。最初の候補地は取得できず計画を一時断念した。ところがその1年半後、新たな土地に巡り合い再びご連絡をいただけたのだった。
敷地は有明山のふもとで山麓線から少しくだる小高い造成地。西側からのアプローチで隣家の隙間を抜ければ、安曇野平を超えて池田町や明科の山々まで遠望できた。下段には麦畑が広がり、季節ごとに変化する様が楽しみに思えた。この見晴らしは今後も遮られる事がないだろう。特異ではあるが、“東に開いたおうちを検討しましょう”と計画が始まった。
建物に対するご要望は少なかった。「うまく言えないが」と前置きしたうえで「重厚感のある平屋」とだけ言われた。“重厚感”とういう言葉が腹に落ちたのは、アパートにある持ち物を見させていただいた時だった。若いご夫婦からは想像し難い、民芸家具や民族玩具、無骨なアートの類を拝見した。ポップで軽やかな箱では許容できない空気感を、現代に合った暮らしの中で相応する設計を心掛けた。
最初のプレゼンでは、全ての部屋を一筆書きで回れるプランを提案した。南面に大きな窓を設けて暖まった空気をリビングに取り込む計画だった。しかしそれらは違うようだった。そこで、出入り口や掃き出し窓を無くして各部屋の籠り心地を大切にした。利便性は劣るが住まい手の暮らしにハマったと思う。
まさにウッドショックの最中、構造木材の使用量を減らすべく、今回は登り梁工法を採用しなかった経緯があり、全ての部屋に天井を張った。リビングのアール天井は、このおうちの象徴的な空間を築いた。アール天井は景色の切り取りにフォーカスを当てる意図があったのだが、それだけでは合理的な説明として薄い。私としては珍しく好奇的な思いを鼻息荒くプレゼンし、“おもしろそうだ”と快諾いただけたのだった。これが勾配天井ともまた違う、とても居心地の良い場所になった。
新屋の家は、敷地の東に広がる光景をめいっぱい取り込む為に南北に長い建物になった。周囲の民家とのバランスを心配したが、軒の低さが功を奏して違和感なく佇んでいる。本物の藁を混ぜ込んで荒々しく仕上げた外壁左官が土着の建築の様だ。
雪がとけたら畑づくりや植栽が始まる。その頃には麦畑もいちめん緑になる。黄金に色付く季節も楽しみだなぁ。図々しいとは理解していますけど^^、また頻繁に通わせていただきますね!
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