松本市神田は市内で最も世代間バランスが整ったエリアだと伺った。
新旧入りまじる住宅地と、南東に位置する田園や里山風景との距離感が程好く感じた。

 

田畑だった場所を3区画分譲し、一番北の突き当たりに出来た旗竿地が神田の家の敷地に決まった。一見、悪条件にも思える立地だが、南アプローチの旗竿地は“竿地”が開けて日当たりが良い。敷地に身を置くと、竿地を延長した向こうには、仁能田山(里山)の紅葉が綺麗だった。

 

施主からの要望は「日当たり(日射の取り込み)」「薪ストーブ」「屋根付き屋外」だった。

 

いつもここから“住まい手と敷地に似合う自然なかたち”の模索を始める。

 

・日当たりが良い竿地の正面に2階建ての居住スペース。

・煙を考慮して煙突が敷地の中心となる位置に薪ストーブを配置。
(熱を室内循環させる為の吹抜けを設けた1.5階建ての高さ)

・隣家がある東側は圧迫感とプライバシーに配慮して平屋の屋根付き屋外。

 

それぞれ異なる階層に、片流れの大屋根が据わり良いとみた提案が一発で施主の共感を得たあの日は本当に嬉しかった。

 

片流れの大屋根が成す佇まいは、そのまま屋内に反映した。

勾配天井特有の小屋裏のような空間が心地よい。

“暮らしを守ってくれるのは天井じゃなくて屋根。だから屋根の存在を中から感じられる場所は安心する”と教わったことがあるがその通りだと思った。

 

施主と一緒に耳をすまして、屋根をたたく雨音が嫌じゃないことも確認した。

 

どうやら自然に少しだけ近づく事が心地よさと関係しているらしい。
杉材が手足に触れたり、壁の砂漆喰に陽射しが当たったり、空や緑の借景もそう、ストーブの炎に薪をくべる行為もそうだけど、暮らしに程よく自然が入り込むと、とても癒される。神田の家はそんな家になった。

 

髙田さん、僕を家づくりの仲間に迎えてくれてありがとうございました。
春になったらまた一緒に薪を割りましょう。

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