「子ども・子育て支援法(2015年)」に基づき、長野県塩尻市で第一号の「小規模認可保育所」が完成した。法制化の背景には、地域子育ての希薄化や待機児童問題があった。そこで民間保育への新規参入を支援し、小規模(家庭的)に3才未満児を、公立の保育料で受け入れできる仕組みが始まった。
商業的な公共建築は「法律と経済」で形づくられる。そこに“保育”“家庭的”という要素が加わると、設計者としては旺盛な使命感を抱いた。
4月から園を担う先生方と、企画から完成まで直接お話ができた(現場の声が聞けた)事でとても学びがあった。少人数ならではの細やかな保育を理解し、子どもを年齢別に区切らない大きなワンルームを提案した。食事や寝んねの子別サイクル、室内空気の入れ換え、嘔吐の処理等、必要に応じて部屋を仕切ることが出来る。ひとりっ子もそうじゃない子も、年齢や成長の異なるおともだちの存在を近くで感じてくれたら嬉しい。エントランスの一部には職員室と保育室に隣接して2.5坪の“たまり場”を設けた。先生や保護者、訪問者が子どもを視認し、コミュニケーションが図れる事を想定している。
正直に申し上げると、企画段階では無垢の木をふんだんに用いた園舎を描いた。小規模保育の特性上、園舎の木造化が法律上で認められ、内装の不燃化制限も受けない稀有な条件が整っていた。しかし、木(自然素材)はメンテナンスや安全性において敬遠される材料であり、無垢の床板への拘りは改めた。
飲みこぼしが染みないように床吹きする先生方の労力を、見守りやチャイルドケアに当てられるという視点こそ大切に思えた。
新型コロナウイルスの影響で、完成見学会も1日入園も中止となった。おそらく第二希望、第三希望の枠で入園する子ども達がほとんどだろう。きっとラッキーな子ども達だ。私は先生方の思いや情熱を散々聞いたから知っているのだ。
最後に桜と園舎の写真を撮った。コロナ禍が少しでも早く収束し、子どもの賑わいを感じられる日を楽しみにしている。
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